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中国のサービスアウトソーシング政策の動向
中国政府は長年にわたり、国内のサービス産業市場への海外企業の参入を厳しく規制してきました。その背景には、中国における市民生活の多くの側面でサービスを提供していた「人民公社」の存在があります。人民公社は国有企業であり、その雇用や市場占有を脅かすことは許されませんでした。このため、中国のサービス産業市場は長期にわたって国有企業が独占的に運営してきたのです。長年にわたる国有企業の独占的支配は、サービス産業におけるイノベーションを抑制し、市場競争を制限してきました。そのため、開放後も既存の国有企業が持つ非効率な運営体制の改善が重要課題となっています。
製造業において、中国は「国有企業」という枠組みを利用し、国内では不効率なサービス部門を維持しつつ、海外には安価な製品を輸出するという戦略を取ってきました。この体制が、中国の経済成長の一側面を支えてきたといえます。
中国のWTO加盟とサービス市場の開放
しかし、2001年12月に中国がWTO(世界貿易機関)に加盟したことで、状況は大きく変わりました。この加盟に伴い、中国はサービス業の規制緩和を進めることを決定しました。これにより、人民公社による独占市場が崩れ始めたのです。しかしながら、中国のサービス産業は、長年国際市場から隔離されていたため、国際水準と比較して大きく遅れを取っている状況にありました。そのため、この分野でのキャッチアップには相当な時間と努力が必要とされています。
一方で、この市場開放は海外企業にとって中国市場に参入する大きな機会となりました。急速に拡大する中国市場へのアクセスが可能となり、多くの海外企業がそのチャンスを活用しようとしています。WTO加盟後、中国市場は多国籍企業にとって魅力的な市場となりました。しかし、ローカルルールや行政の複雑さ、文化的な違いなどが新たな参入障壁として存在しています。
中国のサービス供給強化
中国政府は、サービス産業を強化するために2006年から2010年にかけて「第11次五カ年計画」を実施しました。この計画では、「基本的公共サービスの強化」が主要目標として掲げられ、以下の具体的な目標が設定されました:
1. 教育:国民の平均教育年限を9年間とする。
2. 公共衛生・医療:公共衛生および医療サービスシステムを整備する。
3. 社会保障:社会保障のカバー率を拡大する。
4. 貧困削減:貧困人口を減少させる。
5. 安全管理:防災・減災対策を進め、社会治安および安全生産を改善する。
これらの施策により、国民生活の質を向上させ、国全体の経済的・社会的安定を図ることを目指しています。
中国企業の変化とサービス活用の拡大
また、中国企業の中でも、海外の高品質なビジネスサービスを利用する動きが広がりつつあります。人事、経営、財務経理などの業務を外部に委託(アウトソーシング)することで、コスト削減や収益性の向上を図る企業が増加しています。このような動きは、中国企業の効率化や競争力向上に寄与しています。
中国企業が業務効率化のためにアウトソーシングを活用する動きは、国内外のサービスプロバイダーにとって新たなビジネスチャンスとなっています。一方で、これが国内雇用に与える影響も注視されています。
中国のサービス産業は、遅れた分野から脱却しつつあるものの、依然として多くの課題を抱えています。今後の展望として、規制緩和と市場競争の進展により、中国のサービス業はさらなる成長を遂げる可能性があります。同時に、政府と企業の両方が持続可能な経済発展を目指した取り組みを進めることが必要です。
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