TOP > サービス関連の海外動向 > 韓国のサービス産業の振興政策
韓国のサービス産業の振興政策
韓国は「2006年経済運用の基本方向」を発表した。そこではサービス産業の新しい成長動力化推進として、サービス産業の競争力強化対策の効果を測定する評価指標の開発、運輸・情報通信・金融・保険・流通等の主要サービス産業別に生産性実態調査を実施することとした。このような指標化によって生産性向上対策の確立を急いでいる。
また、同じく2006年に「企画予算処方針」を発表し、サービス政策の策定や人材養成に当たる「社会サービス向上企画団」が同年7月27日に発足した。現在サービス分野で90万人の雇用が不足しており、この企画団の活動で雇用の創出がさらに進むと期待されている。
1. 韓国におけるサービス産業政策の概要
韓国では、経済成長の主要な牽引力として製造業に重点を置いてきたが、2000年代に入ると、サービス産業の競争力強化が経済発展に不可欠であると認識されるようになった。特に、知識経済の進展と共に、サービス業の高度化が国の経済成長と雇用創出において重要な役割を果たすことが明らかになった。韓国政府は2006年に「2006年経済運用の基本方向」を発表し、サービス産業を新たな成長動力として位置付けた。この方針の下で、以下のような施策が進められた。
1. サービス産業の競争力強化対策の策定
2. サービス産業の生産性を測定する評価指標の開発
3. 運輸・情報通信・金融・保険・流通等の主要サービス産業別に生産性実態調査を実施
これらの施策により、サービス業の生産性向上と競争力の強化を図ることが目的とされた。
また、同年には「企画予算処方針」を発表し、サービス政策の策定や人材養成にあたる「社会サービス向上企画団」を同年7月27日に発足させた。この企画団の活動により、サービス産業の労働市場が活性化し、雇用創出が進むことが期待された。当時、サービス分野では90万人の雇用が不足しており、政府はこの問題を解決するための施策を強化した。
2. サービス産業の競争力強化策
韓国政府は、サービス産業を発展させるために多岐にわたる施策を実施した。その主な施策は以下のとおりである。(1)規制緩和とビジネス環境の整備
サービス産業の成長を阻害する要因の一つが厳格な規制である。政府は、外資企業の参入促進や国内企業の競争力向上を目的に、規制の見直しを進めた。特に、金融、医療、教育、観光分野において規制緩和が進められた。
(2)サービス産業向けの投資促進
韓国政府は、研究開発(R&D)支援、税制優遇、インフラ投資を通じて、サービス産業の活性化を図った。特に、ICT(情報通信技術)と融合した先端サービスの開発が奨励され、フィンテックやヘルステックなどの分野において多くの新規事業が生まれた。
(3)人材育成と雇用創出
サービス産業の発展には、高度なスキルを持つ人材の確保が不可欠である。そのため、政府は教育機関や企業と連携し、職業訓練プログラムを強化した。具体的には、以下の施策が実施された。
- 専門人材の育成を目的とした大学や専門学校のカリキュラム改革
- 公的機関と企業が連携したインターンシッププログラムの導入
- サービス業のデジタル化に対応するためのIT研修の実施
3. 主要なサービス産業分野の成長戦略
(1)金融・フィンテック産業韓国の金融市場は急速にデジタル化が進んでおり、政府はフィンテック産業の成長を支援している。ブロックチェーン技術の導入、モバイル決済の普及、オンラインバンキングの高度化などが推進され、韓国はアジアのフィンテック先進国の一つとなった。
(2)医療・ヘルステック産業
政府は医療サービスの高度化を目指し、遠隔診療やAI診断技術の開発を支援している。また、外国人患者の受け入れを促進し、医療ツーリズムを拡大するための政策も進められた。
(3)観光・文化産業
韓国はK-POPや韓流ドラマの人気を活かし、観光産業の強化を図っている。ビザ発給の緩和、観光インフラの整備、地域観光の活性化などが推進され、訪韓外国人観光客の増加が続いている。
(4)情報通信・ITサービス産業
韓国は世界トップクラスのインターネットインフラを誇り、5G通信の導入やデジタルプラットフォームの発展に注力している。政府はスタートアップ支援を強化し、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、AI技術の活用を促進している。
4. 今後の展望と課題
韓国のサービス産業は着実に成長を続けているが、今後克服すべき課題も多い。1. 規制のさらなる改革:依然として存在する規制の壁を取り払い、サービス業の自由な競争を促進する必要がある。
2. 国際競争力の強化:韓国企業がグローバル市場で競争力を持つためには、サービスの品質向上とブランド戦略の強化が求められる。
3. デジタル化の加速:AIやブロックチェーン技術のさらなる活用により、サービスの効率化と高度化を進めるべきである。
4. 雇用の安定化:非正規雇用の増加が課題となっており、労働市場の安定化に向けた政策が必要である。
5. まとめ
韓国のサービス産業は、政府の積極的な政策支援により成長を続けている。特に、フィンテック、ヘルステック、観光、ITサービスの分野で大きな進展が見られる。今後は規制改革、デジタル化の推進、国際競争力の向上を通じて、さらなる発展が期待される。[オススメ記事]サービスはどのように研究されてきたか?
[オススメ記事]経済産業省「新産業創造戦略」

