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サービスサイエンスのはじまり

サービスを対象にした科学・工学である「サービスサイエンス」もしくは「SSME」が、新たな学問として創生されつつありますが、その着眼点は何かを考える必要があるでしょう。

サービス産業の重要性


サービス、サービス産業が重要であるという認識はかなり以前からされてきました。高度成長後の日本の産業構造の中で、常に大きな割合を占めてきました。近年特に重要性が増したわけでもありません。では、なぜいまさら「サービスサイエンス」なのでしょうか。

先進国では産業構造の高度化、成熟化によって第一次産業(農林業等)、第二次産業(製造業等)に比べて第三次産業(サービス業等)の比重が高まっています。これは産業社会が成立して以来、一貫して起きてきた現象です。日本も例外ではなく、総務省統計局の資料によると、日本の1990年代のサービス業の付加価値ベース(生産額ベース)の増加率は米英と比較しても高いものです。

このように、サービス産業の重要化は産業構造の推移の中で、必然ともいえるのです。特に成熟社会への只中にある日本にとってサービス産業をどのように高度化・効率化していき、消費者が満足する高品位な社会を実現していくかは大きな課題となっています。

サービス産業の岐路


ただし、1970年代以降サービス産業社会に移行した日本にとって、特に近年サービス産業が重要となった大きな転換点は、「ものづくり」産業のシフトによる影響なのです。安い、品質(長持ち)がいいという日本製品の利点は、後発国からの追撃にあい、すでに優位性を保つことができない状態になっています。コスト競争の点から、中国やASEAN諸国に対抗することはできません。

では、日本のメーカーは何を志向するべきか?その回答の一つが「サービス価値」で差別化するということです。IBMがPC生産部門を中国企業に売却し、サービス部門に資源を集中させたことがよい例でしょう。

この点からいえば、サービスサイエンスは「製造業のサービス化」を支援するための知識基盤の整備ということになります。伝統的にサービス産業を研究してきた諸分野(経営戦略、組織論、マーケティング論など)の視点とは異なるといわざるを得ません。

ただし、接客サービスをはじめ、伝統的なサービス産業の効率化・高度化・付加価値化をめざすという上でも、製造業のサービス化のための知識基盤整備は大きく貢献することになるでしょう。工学的な視点が大規模に導入され、サービスの効率的な生産と新サービス創出のためのデータに基づいたアプローチなどが可能になると考えられるからです。


SSMEを提案したIBM


これまでサービス産業では「勘」や「経験」が大切にされてきました。製造業と比較して、科学的な経営が行われてこなかったということができるでしょう。そのような傾向にいたった背景はいろいろと解釈できるでしょう。

そんな中、いち早くサービスサイエンスという言葉を用いてサービスの向上に取り組もうとしたのが米国のIBMでした。IBMは、知っての通り世界規模のコンピュータメーカーです。製造業であるIBMがサービスを強く意識するようになった背景には何があるのでしょうか。

1つは、製造の現場が人件費の安い国へ移っていること。「良いモノを作れば売れる」という時代は終わり、モノにはさらに高い付加価値が求められています。付加価値を付けるための重要な要素がサービスだといえます。

もう1つは、サービスの現場が同じように人件費の安い国へ移っていることです。例えば、今、コールセンターやカスタマーサポートの窓口をインドや中国などに置く企業が増えています。そのような中、サービスの質を確保するためには教育コストがかかります。

そこで、サービスを科学的に研究し、教育しようという試みが生まれたのです。それが研究教育対象としてのサービスサイエンスの誕生です。サービスサイエンスは、「サービスサイエンス、マネジメント、エンジニアリング」を略して「SSME」ともいわれます。

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