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2010年代以降のEUのサービス産業政策
EUは、2006年の「サービス指令」採択以降、サービス産業の強化と市場統合を推進するため、さまざまな政策を展開してきました。以下に主な動向をまとめます。
1. サービス指令の実施とその影響
サービス指令は、域内でのサービスの自由な移動を促進する目的で制定されました。加盟国は2009年末までにこの指令を国内法化し、サービス提供に関する行政手続きの簡素化や規制の調和を進めました。これにより、サービス業の越境提供が容易になり、EU全体の経済成長に寄与しました。
2. デジタル分野におけるサービス政策
近年、デジタルサービスの重要性が増す中、EUはデジタル市場の統合と安全性の確保に注力しています。2016年には「NIS指令」を施行し、重要インフラ事業者やデジタルサービス提供者に対してリスク管理や重大なインシデントの報告を義務付けました。これにより、デジタルサービスの信頼性と安全性を向上させる取り組みが進められています。
3. 新産業戦略とサービス産業
2020年3月、欧州委員会は新たな産業戦略を発表し、2021年5月に更新しました。この戦略では、産業・エネルギー環境・通商のリンケージを強調し、サービス産業の競争力強化や持続可能な成長を目指しています。特に、デジタル化やグリーンエコノミーへの移行に対応したサービス分野の発展が重視されています。
4. サーキュラーエコノミーとサービス産業
EUは、循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行を経済戦略として位置付けています。2020年には「サーキュラーエコノミー行動計画」を打ち出し、資源の効率的利用や廃棄物削減を推進しています。これに伴い、リサイクルやリユースに関連するサービス産業の需要が高まっており、新たなビジネス機会が創出されています。
5. CSR(企業の社会的責任)に関する政策
EUは、企業の社会的責任(CSR)に関する政策も強化しています。特に、企業のサステナビリティ報告に関する指令(CSRD)を策定し、企業に対して環境・社会への影響に関する情報開示を義務付けています。これにより、サービス産業を含む企業全体の透明性と持続可能性が求められるようになっています。
これらの政策を通じて、EUはサービス産業の競争力強化と市場統合を推進し、持続可能で包括的な経済成長を目指しています。 [オススメ記事]中国のサービス産業の振興政策
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