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サービス・ドミナント・ロジック(SDL)とは

サービス・ドミナント・ロジック(SDL: Service-Dominant Logic)は、従来の「モノ(財)中心の考え方」ではなく、「サービス中心の価値創造」に焦点を当てたマーケティング理論です。この考え方は、2004年にスティーブン・ヴァーゴとロバート・ルシュによって提唱されました。

従来の「財ドミナント・ロジック(GDL: Goods-Dominant Logic)」では、企業は製品を作り、市場に供給することで価値を提供すると考えられていました。しかし、SDLでは価値は企業単独で創出するものではなく、顧客との相互作用によって生まれるものだとされます。


SDLの主な特徴

SDLにはいくつかの重要な特徴があります。

1. サービスは価値の基本単位
●製品(モノ)も、顧客に価値を提供するための「サービスの媒体」として捉えられます。
●例えば、自動車は単なる移動手段ではなく、顧客に「移動する利便性」というサービスを提供するものです。

2. 価値は共創される
●企業だけで価値を決定するのではなく、顧客がその価値を体験し、共創することで初めて意味を持ちます。
●例えば、スマートフォンは単なるハードウェアではなく、アプリを通じた多様なサービスの利用によって価値が生まれます。

3. 財とサービスの境界が曖昧
●従来のGDLでは「モノ=財」、「サービス=付加価値」と考えられていましたが、SDLではすべてがサービスの一形態であるとされます。
●例:サブスクリプション型のビジネスモデル(Spotify、Netflixなど)は、製品を所有するのではなく、サービスとして利用する形になっています。


SDLの実践例

SDLの概念はさまざまな業界で応用されています。

1. 製造業のサービス化(Servitization)
●企業は単に製品を販売するだけでなく、メンテナンスやカスタマイズ可能なサービスを提供することで顧客との関係を深めます。
●例:GEの「Predix」プラットフォームは、航空機エンジンの状態をモニタリングし、最適なメンテナンスを提供することで、単なるエンジン販売以上の価値を生み出しています。

2. プラットフォームビジネス
●顧客同士が価値を共創する場を提供することで、新しいサービスエコシステムが生まれます。
●例:UberやAirbnbは、企業が直接サービスを提供するのではなく、利用者同士を結びつけることで価値を共創する仕組みを作っています。

3. カスタマーエクスペリエンス(CX)の重視
●企業は単なる製品提供ではなく、顧客の体験価値を向上させることに焦点を当てています。
●例:Appleの直営店では、製品を売るだけでなく、体験型のサービスを提供することで、ブランドの価値を高めています。


SDLの今後の展望

今後、SDLの概念はより広がりを見せると考えられます。

●デジタル技術との融合:AI、IoT、ビッグデータを活用したパーソナライズドサービスの展開が加速。
●持続可能な価値創造:環境や社会への貢献を重視したサービス設計。
●顧客との関係強化:長期的な関係構築を目的としたマーケティング戦略の発展。

SDLは、単なる理論ではなく、実際のビジネス戦略に大きな影響を与える重要な概念です。企業が競争力を維持し続けるためには、サービスを中心とした価値共創の視点を持つことが不可欠となるでしょう。


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